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糖尿病神経障害

松葉医院   松葉育郎

はじめに

糖尿病性神経障害とは、網膜症、腎症とならんで、高血糖の状態が長く続くことによっておこる糖尿病の3大合併症の一つである。 足や手など末梢の比較的細い神経線維から始まる末梢神経の障害と、心臓、血圧や胃腸の動きを司る自律神経系にも障害を伴う。 末梢神経障害も自律神経障害も、高血糖で変性した蛋白がたまったり、神経に栄養を供給する細い血管がつまって神経が部分的に死滅するために発症すると考えられている。
 神経障害は、その発症は突然起こるものではなく、通常徐々に進行してくる。一方、血糖コントロールを良好に保つと、高度に進行した場合を除いて神経障害は改善傾向を示します。 3大合併症の中で、腎症や網膜症が自覚症状のないまま5年、10年と経過し病状がかなり悪化してから気付くことが多いのに比べて、神経障害だけは手足のしびれなどの自覚症状が初期の頃から現れてきます。症状が軽いからといって放置していると悪化の一途をたどってしまいますが、重症でない限りしっかりとした血糖コントロールを続ければ、症状を改善することが可能な合併症です。
 神奈川県内科医会は、糖尿病神経障害の実態調査を2004〜2005年に県下で実施し、5000例の症例を収集し、糖尿病患者における糖尿病神経障害を、患者、医師用アンケート、同じ打鍵器、音叉などを使用して、さらに、触覚検査にはティシュペーパーテストを用いて、統一的な手法で検討した。その結果も踏まえて、糖尿病神経障害の成因、病態、診断および治療方針について述べる。

成因

糖尿病性の神経障害は末梢神経の体性および自律神経部分に出現するものを含むと定義され,初期には無症状で機能検査で正常値より逸脱する所見だけが得られ,その逸脱の程度が次第に大きくなって明らかな異常値となり,更に進行すると臨床症状が現れる。また,神経障害は単発性に起こることもあるが,大抵は多発性で体性神経,自律神経に並行し同時進行の形で起こることが多い。はっきりした機序は未だ解明されていないが、様々な仮説が提唱されている。有力な仮説としてポリオール代謝系の異常が挙げられる。慢性の高血糖状態により引き起こされる末梢神経内へのソルビトールやフルクトースの蓄積、myoinositolやcAMPの減少などが細胞膜のNa-K-ATPaseの活性を低下させ、神経機能を障害するという説。その他、グリケーションによる後期糖化生成物(AGE)産生亢進、PKC活性化、酸化ストレス、成長因子、自己免疫機序等の関与を示唆する仮説、.血流障害も重要な因子であり、高血糖状態が神経内鞘の毛細血管に血流障害を起こし、神経線維が慢性的な低酸素状態となり、軸索流の障害などを介して軸索変性を起こす。これらの代謝障害・血流障害を介して、糖尿病患者の約40%に何らかの神経障害が存在するといわれており、高血糖の持続により症状は悪化する。

糖尿病性神経障害の発症機序
 糖尿病性神経障害は、代謝および血管障害が主因で発症する。正常なポリオール代謝経路では、グルコースが、アルドース還元酵素により代謝され、ソルビトール、そしてフルクトースが生成される。インスリンはGLUT4(心筋、骨格筋、脂肪脂肪細胞に発現)の発現を増加させ、細胞内へのグルコースの取り込みを増加させる。 インスリンの作用によらず、グルコースが受動的に流入する細胞では、グルコースが、ポリオール代謝経路により、ソルビトールやフルクトースに代謝され、細胞外に放出される。一方、糖尿病では、高血糖により、細胞内グルコース濃度が増加し、その結果、ポリオール代謝経路が亢進し、細胞内ソルビトール濃度が増加し、神経組織に蓄積する。他方、ソルビトール脱水素酵素(ソルビトールをフルクトースに代謝する酵素)の活性は、上昇しない為、ソルビトールが細胞内に蓄積し、細胞内浸透圧が上昇し、細胞内に水分が流入し、細胞が膨潤、浮腫に至る。神経組織に蓄積したソルビトールは、イノシトールを低下させ、神経細胞膜のNa+/K+-ATPase活性を低下させ、末梢神経の軸索が変性し、電気的刺激伝導が遅くなる。知覚神経が障害されると、痛みやしびれ、熱感などの症状が現われ、自律神経が障害されると、めまい、立ちくらみ、発汗異常、胃腸障害、あるいはインポテンスなどの症状が現われる。  アルドース還元酵素(AR)は、水晶体上皮細胞、網膜血管細胞、腎メサンギウム細胞、末梢神経のSchwann細胞に存在している。 酸化ストレスは、アルドース還元酵素が関与する、グルコースがソルビトールに変換される反応で、NADPHのNADPへの酸化を、亢進させる。糖尿病では、糖化蛋白(終末糖化産物:AGEs)の産生が増加する。ミエリン蛋白が糖化されると有髄神経の機能や形態が障害される。血管障害により神経内鞘の虚血をきたし、さらに血管収縮因子の上昇により、血流が低下し、神経線維の脱落がはじまる。グルコースからソルビトールが生成され、補酵素としてNADPHが消費される。その為、ソルビトールが生成されると、NADPH消費を競合する血管内皮細胞から産生される血管弛緩因子NO(一酸化窒素)産生が障害され、神経血流が低下したり、活性酸素が増加し、さらに酸化ストレスが増強することになる。

糖尿病性神経障害の検査と診断

糖尿病で神経障害を進展させないためには定期的に検査を受け、早期に発見することが大切です。 また、問診の時に自覚症状を詳しく聞き、検査を適時実施して総合的に診断を行っていきます。糖尿病患者を診察する際には,必ず神経障害の有無あるいはその重症度について判断する必要がある。糖尿病神経障害に特異的な症状や検査は存在しないので,多数の神経症状と検査結果を総合し,神経障害の診断を行う。スクリーニングに有用な検査は,アキレス腱反射,振動覚,神経伝導速度,モノフィラメントを用いたタッチテスト,心拍変動などの検査であり,定期的にこれらの検査を行うことにより神経障害の発症および進展を早期かつ正確に診断することができる.

血糖の高い状態が続いていると、まず手や足先の神経から障害がおこります。症状としては、手足のしびれや痛み、足先の異常な冷え、足底部が皮をかぶった感じ、砂利の上を歩いているような感じといったものがあります。これらの症状は比較的軽いため放置したり、市販薬で治療する患者さんもいますが、この段階で適切な治療を受けないと症状は、さらに悪化して、全身の筋肉の萎縮、顔面神経麻痺、便秘、排尿障害、立ちくらみ、インポテンツなどといった症状がおこってきます。
 さらに進行すると、症状はますます重くなり手足のしびれや痛みのために夜眠れない、火傷や靴ずれに気がつかず放置していたために細菌感染をおこし、壊疽(えそ)にまで発展することもあります。ひどくなれば足を切断することにもなります。こういった状態にならないために、症状が軽いうちから治療をはじめることが必要です。

症状に応じた検査が必要です

糖尿病神経障害の臨床的分類

糖尿病神経障害は糖尿病患者における最も重大な合併症のひとつであり,主として知覚神経と自律神経が障害される.糖尿病神経障害は広汎性多発性神経障害と単発性神経障害に分けられるa)(表 1).臨床で最も多くみられるのは,多発性の感覚神経・運動神経障害と自律神経障害である.多発性神経障害では,四肢末端に知覚鈍麻,および自発痛,しびれ感・灼熱感などの異常感覚を示すことが多く,患者に強い苦痛を与えることがある.なかでも、有痛性糖尿病性神経障害による有害でない刺激に対する過敏反応であるallodynia、穿刺痛(lancinating pain)、電撃痛のようなshooting pain、灼熱感(burning pain)などは四肢末端に左右対称に起こり、夜間増悪することを特徴とする。自律神経障害は,発汗異常,起立性低血圧,消化管の運動障害(便秘,下痢),心臓神経の障害,瞳孔の変化,膀胱の機能障害,勃起障害などを起こし,しばしば日常生活に重大な支障をきたす。単発性神経障害は,脳神経障害,特に外眼筋麻痺,体幹・四肢の神経障害,糖尿病筋萎縮を起こす.

表 1 糖尿病神経障害の分類と主な症状

A.広汎性左右対称性神経障害(代謝障害が主因)

1.多発性神経障害

異常感覚(しびれ感,ジンジン感,冷感など),自発痛,感覚鈍麻,こむらがえり

2.自律神経障害

発汗異常(味覚性発汗,無汗),起立性低血圧,胃無力症,便通異常(便秘,下痢),

胆*無力症,膀胱障害,勃起障害,無自覚性低血糖など

B.単発性神経障害(血管閉塞が主因)

3.脳神経障害

外眼筋麻痺(動眼・滑車,外転神経麻痺など),顔面神経麻痺,聴神経麻痺など

4.体幹・四肢の神経障害

尺骨神経麻痺,腓骨神経麻痺,体幹の単発性神経障害

5.糖尿病筋萎縮

糖尿病性神経障害の分類】

分 類

原 因

症 状

多発性神経障害
(知覚・運動神経の障害)

神経細胞内にソルビトールという物質が蓄積されることで、神経障害がおこるとされている

しびれ、冷感、神経痛、感覚麻痺、こむらがえりなど

自律神経障害

発汗異常、立ちくらみ、便秘、下痢、胆のう収縮能低下、尿意を感じない、インポテンツなど

単一性神経障害

細い血管が詰まって、神経に血液が通わなくなることで神経障害がおこる

顔面神経、外眼筋、聴神経の麻痺や四肢の神経障害など

 


 本邦では、糖尿病神経障害を考える会が簡易診断基準を提案している。さらに、日本臨床内科医会は、2000年に大規模な国内の糖尿病神経障害の実態調査を実施し、調査は同会会員のうち1,249名が参加し、1万2,860例を対象とした。解析対象となった糖尿病患者は1万2,821例。医師が神経障害ありと判断したのは4,709例(37%)で、網膜症23%、腎症14%に比べ高率で、糖尿病患者の3分の1以上を占めていた。 神経障害は加齢に伴って高率になる傾向が網膜症や腎症より顕著で、糖尿病発病年齢別は、20〜40歳代発病症例で比較的高頻度だった。 治療法別に神経障害の頻度を見ると、食事療法だけの症例では24%と低いが、経口糖尿病治療薬中の症例では35%、インスリン治療中の症例では53%と高率だった。血糖コントロール別に見ても、コントロール不良の症例ほど高率であった。 この他、糖尿病の罹病年数、コントロール状態、年齢別にみた治療法、治療法別にみた合併症など、多くの興味ある結果が報告された。 この調査に基づき同会では以下のような神経障害の外来診断基準をまとめた。


日本臨床内科医会の「糖尿病性多発性神経障害の外来診断基準」b)

1. 検査
次のように配点し、4点以上あること。
(1) アキレス腱反射消失:左右それぞれ2点
(2) アキレス腱反射減弱、足の振動覚・痛覚・冷覚の低下あるいは消失:左右それぞれ1点

2. 症状
下記のうち2つ以上あること。
足底の異常感覚、足底の感覚鈍麻、足(下腿)のしびれ感、蟻走感、足が冷たい、足の灼熱感、こむらがえり、(夜間増強することの多い)疼痛、立ちくらみ(起立性低血圧)
症状が1つのときはこれに順ずる。
得点が4点以上で症状が無い場合は無症状性とする。

3.
神経障害の原因が糖尿病以外には考えられないこと。

以上の3条件が認められる場合を糖尿病神経障害ありと診断する。

神奈川県内科医学会は、2005年から2006年にかけて、糖尿病神経障害の実態調査を施行した。、医師・患者アンケート調査により、症状、患者背景と簡便な検査法、アキレス腱反射、下肢の触覚、振動覚の関係を検討した。。

今回の検討では、患者アンケート調査により症状、、打腱器、C128音叉を医療機関に配布し、同じ方法、道具でアキレス腱反射、振動覚、これに関しては内踝と足の親指、それから、触覚検査としては、今回はどこでも手に入るティッシュペーパーテストを触覚の検査とした。

対象症例数は4,837例であり、男女比は1:0.85、平均年齢は64.5歳、平均罹病期間は10.7年、平均HbA1cは7.4%であった。自覚症状を主体とした主治医判定による糖尿病神経障害の合併症頻度は40.1%(1,938例)であった。各種自覚症状の発現頻度は「しびれ」38%、「冷感」33.6%、「感覚鈍麻」17.7%、「こむら返り」40.4%、「めまい」27.2%、「便通異常」31.4%、「発汗異常」20.8%で、高頻度に自律神経障害の症状が認められた。アキレス腱反射異常率は50.8%、振動覚(内果)低下率52.8%、下肢触覚異常率は29.6%であった。背景より、糖尿病神経障害の患者は、神経障害無しの患者に比べ、年齢、HbA1c、食後血糖値が有意に高く、糖尿病罹病期間も長かった。また、網膜症や腎症発症頻度も有意に高かった。

糖尿病神経障害の有無でのアキレス腱反射異常頻度は、神経障害ありで69.1%、なしが25.8%と有意差(p<0.001)が認められた。同様に振動覚低下は、神経障害ありが66.5%、なしが43.2%(p<0.001)、下肢触覚異常は神経障害ありが47.2%、なしが17.3%(p<0.001)と、いずれも神経障害の有無で有意な差が認められた。また、正中神経の運動神経伝導速度と感覚神経伝導速度、およびF波伝導速度は、神経障害なしの患者に比べ、神経障害有りの患者で有意に遅延していた。さらに、各種自覚症状の頻度をアキレス腱反射異常の有無および下肢触覚検査異常の有無で比較した。その結果、アキレス腱反射異常の患者では、検査正常の患者に比べて全ての自覚症状項目の頻度が有意に高かった。下肢触覚検査においてもアキレス腱反射と同様に、全ての自覚症状項目で有意差が認められた。

神奈川県における糖尿病神経障害の実態調査を行った結果、神経障害の合併頻度は40.4%であった。これは日本臨床内科医会で報告された頻度とほぼ同等であった。今回実施したティッシュペーパーを用いた下肢触覚の検査は他の検査に比べ、異常率は低かったが、神経障害の有無、自覚症状とは良く相関しており、アキレス腱反射や振動覚と同様に、糖尿病神経障害の診断を補完する手段として有用であると思われた。

  糖尿病神経障害の特徴ですが、1つは末梢神経障害としては、両側の下肢に症状が出るということ。左右対称性であるということ。ところが、いろいろな診断基準は、感覚障害については、検査する方法が今まで確立したものがなかったから、むしろアキレス腱反射、または振動覚を基準に組み入れて判断してきた。糖尿病の神経障害の発症するときにあらわれる足の症状という特徴がある。両側に出るということ、2番目に、足の裏や足の指先に症状が出やすい、しびれ、異常感覚、痛み、感覚鈍麻、ふくらはぎがつりやすい、こむら返りが多いことです。しびれ感は、体の表面の感覚が鈍くなっている状態、外からの刺激を正常以上に強く、または不快に感じるもの、さわるとビリビリ痛く感ずるなど、外界からの刺激がないのにビリビリする異常感覚といいます。こういったものをしびれ感といいます。知覚鈍麻は、体の表面にある触覚と温冷覚と痛覚があります。触覚を検査するティシュペーパーテストは、主観が入らないようにして、感覚障害の評価をできる、簡易でどこでもできる利便性があると考えられます。 一般的には、筆先を軽く押しつけて触覚を見るとか、痛覚に関しては、ルーレットの先を転がしてみる、つまようじで刺すなどが行われています。科学的根拠に基づく糖尿病治療ガイドラインによると、糖尿病神経障害の診断に関しましては、アキレス腱反射と振動覚、神経伝導速度、触覚はモノフィラメントを用いたタッチテストを挙げています。このモノフィラメントというのは、いろいろな太さの鉛筆の先についたフィラメントで触るのですが、このかわりに、どこでも手に入るティッシュペーパーで触覚の検査をすることは利便性があり、実施容易である。

 アキレス腱反射が糖尿病神経障害の診断に有用だということは、東北地区の糖尿病神経障害調査から明らかになっております。どの罹病期間の患者においても、アキレス腱反射は感度、特異性にすぐれていたという結果が出ております。特に、罹病期間の短いところでは、特異度がすぐれており、アキレス腱反射の異常は、足症状の発現に比べ糖尿病発症早期から高い発現率でした。主治医の総合判断でも、アキレス腱反射の臨床症例は、正常症例に対して15.3倍とオッズ比は高値を示し、振動覚検査、自覚症状より、アキレス腱反射の異常を、主に糖尿病神経障害を診断しているということが報告されています。

糖尿病性神経障害の治療

血糖コントロールの改善が第一 

糖尿病神経障害の発症・進展を阻止するためには,糖尿病発症早期から厳格な血糖コントロールを維持するとともに,高血圧,高脂血症などの危険因子をも厳格にコントロールすることが重要である.糖尿病性神経障害の治療の基本は、血糖コントロールを良好に保つことです。食事療法・運動療法・薬物療法により血糖コントロールを厳格に行わなければ、神経障害に対する薬物治療をおこなっても、満足のいく効果は期待できません。また、症状が軽い初期の頃は、血糖コントロールを正常化するだけで、神経障害の諸症状を改善することができることもあります。しかし、日常生活に支障をきたす場合は、血糖コントロールと生活習慣の改善に加え、症状緩和のための薬物療法が必要になってきます。 治療薬としては、神経障害をおこしている原因物質とされるソルビトールの産生をおさえるアルドース還元酵素阻害薬がありますC)。また症状にあわせて、向神経系ビタミン薬、痛みをやわらげる非ステロイド系消炎鎮痛薬、抗不整脈薬、抗けいれん薬、抗うつ薬などをもちいます。これらの対症療法効果は、必ずしも十分とは言えません。有痛性糖尿病性神経障害の有効な治療薬がない理由の一つに、糖尿病性神経障害における痛みの感受性の亢進に関する詳細な機序が解明されていないことが挙げられる。

現在までのところ、鎮痛作用、睡眠作用あるいは抗不安作用などを指標とした、抑制性中枢神経作用薬に対する薬物感受性は糖尿病態で減弱しており、その機序として、有痛性神経障害と同様に、細胞内プロテインキナーゼC活性および細胞内カルシウム量の上昇などが関与している可能性がある。

非ステロイド性消炎鎮痛薬は軽症例でのみ有効である.中等症以上の場合は,三環系抗うつ薬,抗痙攣薬 およびメキシレチンが有効であり,単独あるいは併用で用いると有用である.中等度以上の有痛性神経障害に対してはイミプラミン,アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬が適している。

重症例では皮膚への接触にも不快感を伴う疼痛があり、就寝時の電撃痛にみまわれるなど、症状が続くことから、不眠、ひいては反応性うつ病を伴うことがある。現在用いられているのは向神経系ビタミン薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬、アルドース還元酵素阻害薬などであるが、これらの対症療法効果は重症例では十分ではない。さらに、フルフェナジンやクロルプロマジンなどの抗精神病薬との併用も有効である.メキシレチン投与時に注意すべき副作用は不整脈の出現であり、定期的に心電図検査を行い,不整脈の出現に注意しなければならない.

これらの治療を始めると一時的に痛みが悪化することがあります。治療後神経障害といわれるものですが、この詳しい原因はまだわかっていません。治療の途中で一時的に症状が悪化することがあるということを理解し、痛みがひどくなったからといって自己判断で治療を中止することなく、治療を続けるようにしなければならない。反対に、神経障害が進行して痛みを感じなくなったのを、治ったものと勘違いすることもありますので注意を要する。

自律神経障害、単発性神経障害の治療           

糖尿病の自律神経障害により、自律神経の関与する全身臓器の機能異常が起こりうる。

発汗異常,起立性低血圧,胃無力症,便通異常,膀胱機能障害,勃起障害,無自覚性低血

糖などの多彩な症状を呈する.軽症の場合は,血糖コントロール、生活習慣の改善により,これらの機能障害は改善することが多い.しかし,神経障害が進行し,日常生活を障害する場合は,薬物療法が必要であり,症状に応じた対症療法を行わなければならない.

糖尿病患者では四肢・体幹の神経における単発性神経障害も多い.単発性神経障害は,自然に軽快することが多い.従来の多発性神経障害の治療法に準ずる。

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【参考文献】

a)堀田 饒:神経障害.カレント内科 No. 6 ―糖尿病,豊田隆謙(編),金原出版,東京,

p145―154,1996

b)後藤由夫ほか:糖尿病性神経障害に関する調査研究.日本臨床内科医会会誌,第16巻第2号,4号別冊、2001

c)Kaul CL, Ramarao P:The role of aldose reductase inhibitors in diabetic complications:

Recent trends. Methods Find Exp Clin Pharmacol 23:465―475, 2001

             

医学専門書;糖尿病 特集 一部抜粋、2007年

 

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